AIエージェントの共通指示を半分にする—毎回読む情報を選び直す
AIエージェントやデータ処理を日常運用へ入れると、機能が動くことと、安全に繰り返せることの間に差があると分かります。今回取り上げるのは、**全案件で使う共通指示が膨らみ、関係のない情報まで毎セッションの初期コンテキストへ入る**という課題です。最近の実施記録で確認できた事実を土台に、別環境でも小さく再現できる形へ整理します。
本文では、実際に確認できたこと、そこから導いた設計判断、まだ完了していない改善を分けます。公開用の例はすべて架空値へ置き換え、メールアドレス、認証情報、内部URL、実在する対象IDは掲載しません。評価・市場データに触れる箇所も、目的はソフトウェアとデータ品質の解説であり、特定の投資や売買を勧めるものではありません。

最近の取り組みで確認できたこと
- **確認事項1**:共通設定から大きな原則ファイルの読み込みを外し、必要な指示へ絞った。根拠記録は2026-08-29です。
- **確認事項2**:推定初期量を約8,700トークンから約4,400トークンへ削減した。根拠記録は2026-08-29です。
- **確認事項3**:削除ではなく復元用コピーを残し、必要時に戻せる状態で変更した。根拠記録は2026-08-29です。
これらは同じ障害の言い換えではありません。入力を選ぶ段階、処理を起動する段階、結果を保存する段階、集計・表示する段階で、それぞれ別の失敗が起こります。記事化にあたっては、後から確認できない成功を補わず、記録と成果物で確認できた範囲だけを完了事項としました。
なぜ単純な対処では足りないのか
共通指示は便利ですが、便利さと引き換えに毎回コストを払います。現在の案件と関係のない設計原則、過去の障害手順、長い参考資料まで常時読み込むと、ユーザーの依頼や対象コードに使える余地が減り、互いに似たルールが衝突しやすくなります。
削減の目的は短くすること自体ではありません。必ず守る共通ルールの信号を強くし、専門手順を必要なときだけ呼び出せる構造に変えることです。文字数だけを追うと、重要な安全策まで落とす危険があります。
短期的な復旧だけなら手動再実行や表示上の調整で終えられる場合があります。しかし日次運用では、翌日も同じ判断を人が繰り返さない仕組みが必要です。そのため、原因の説明だけでなく、入力の固定、上限、証拠、ロールバック、完了条件までを一つの運用契約として定義します。
仕組みを分解する
1. **読込元を棚卸し**
2. **常時必要を選別**
3. **局所ルールへ移動**
4. **前後を計測**
各行を『全案件で必須』『特定プロジェクトだけ』『特定ファイルだけ』『手順書へ移せる』『古い・重複』へ分類します。全案件で必須なものだけを共通ファイルへ残し、ビルド方法やアーキテクチャはプロジェクト指示、詳細な反復手順はSkillや参照文書へ移します。
外した情報はすぐ消さず、日付入りの復元用コピーとして隔離します。変更前後で、読み込まれるファイル一覧、行数、概算トークン、代表タスクの遵守結果を比べます。短くなっても重要ルール違反が増えた場合は成功ではありません。
各段階には機械が判定できる終了条件を置きます。「たぶん正常」「画面が開いた」ではなく、どの入力に対して何を検査し、どの成果物が残ったら次へ進むかを記録します。段階を跨ぐデータにはrun IDと基準時刻を付け、別日の結果が混ざらないようにします。
小さく再現する手順
本番環境を直接変更せず、`/path/to/project`配下の架空データで試します。認証値は`YOUR_TOKEN`のようなプレースホルダーを使い、実値を履歴や画面キャプチャへ残さないでください。
1. **現在読み込まれる共通・プロジェクト・局所指示を一覧化する**
2. **同じ意味の重複、矛盾、期限切れ、長い例示をマークする**
3. **専門手順をSkillへ、パス固有ルールを局所設定へ移す**
4. **変更前ファイルを公開されない復元場所へ保存し、差分を記録する**
5. **代表タスク3種でルール遵守と概算トークンを比較する**
“`text
global instructions:
– safety and approval boundaries
– universal communication rules
project instructions:
– test command and architecture
on-demand skill:
– release and publishing procedure
“`
最初の実験では対象を3〜10件に絞ります。正常系だけでなく、入力欠損、途中停止、二重実行、保存後の検証失敗を意図的に作ります。失敗fixtureを用意すると、単に例外が出るかではなく、安全に止まり、理由が通知され、次回再開に必要な状態が残るかまで確認できます。
再実行は同じ操作の繰り返しに見えても、新しい費用・状態更新・外部通信を発生させます。したがって、元の状態を読み取り専用で保存し、変更対象を列挙し、上限を確認してから実行します。成功後も、予定した対象と保存された対象をID単位で照合します。
確認指標
- 起動時の概算トークン
- 重複・矛盾ルール数
- 代表タスクの遵守率
- オンデマンド参照成功率
比較には同じ三つの小課題を使います。たとえば調査、軽微な修正、破壊的操作を含む計画です。変更前後で回答品質だけでなく、確認が必要な場面で止まれたか、指定テストを実行したか、不要な手順を持ち出さなかったかを確認します。
トークン値はツールやモデルによる概算差があるため、絶対値より同じ計測方法での前後差を使います。また、ファイルをimportsへ分割してもすべて起動時展開されるなら削減にはなりません。実際のロード一覧を確認します。
指標には母集団、基準日、計測時刻、取得元を添えます。閾値はこの記事の観測値をそのまま流用せず、自分の処理件数、許容時間、業務影響から決めます。暫定値は暫定、推定値は推定、取得不能は取得不能として扱い、0へ変換しません。
日常運用へ入れるルール
- 月1回、重複と期限切れを棚卸しする
- 重要ルールには理由と適用範囲を一文で付ける
- 詳細例は常時読込ではなく参照文書へ移す
通知は成功・警告・失敗を分けます。成功通知にも、処理件数、検証済み件数、基準日、成果物への参照を含めます。警告は自動継続したのか、人の判断を待って停止したのかを明記します。詳細ログをそのまま送るのではなく、秘密情報を除いた要約とrun IDを渡します。
また、設定変更と本処理を同時に行わないことも重要です。復旧のために依存更新、データ移設、再実行を一度に行うと、成功しても何が効いたか分かりません。一つずつ変更し、同じ検査を繰り返せる形にします。
失敗しやすい点と安全策
1. 文字数だけを削減目標にする
遵守率と誤動作も同時に比較する。さらに、変更前後の証拠を同じ形式で残し、成功表示だけで判断しません。
2. ファイルを分割すれば軽くなると思う
実際の起動時展開範囲を確認する。さらに、変更前後の証拠を同じ形式で残し、成功表示だけで判断しません。
3. 古い指示をすぐ削除する
復元期限付きのコピーと差分を残す。さらに、変更前後の証拠を同じ形式で残し、成功表示だけで判断しません。
4. 共通ルールへ案件固有の手順を足し続ける
局所指示またはSkillへ移す基準を決める。さらに、変更前後の証拠を同じ形式で残し、成功表示だけで判断しません。
安全策の共通点は、処理の外側に確認可能な証拠を残すことです。対象一覧、設定版、実行時刻、終了理由、成果物件数が別々に残っていれば、モデルの回答が途切れたりUIが変わったりしても状況を復元できます。
再現チェックリスト
- [ ] 根拠にした実施日と確認範囲を記録した
- [ ] 入力・状態・成果物を別々に保存した
- [ ] 正常な0、欠損、エラーを区別した
- [ ] 小さなfixtureで正常系と異常系を試した
- [ ] 再実行時の重複・上限・戻し方を決めた
- [ ] 個人情報、秘密値、内部URLを公開例から除いた
- [ ] 未完了の改善を実装済みとして書いていない
判断記録を残す
実装の最終結果だけでなく、採用しなかった案も短く残します。判断日、選択肢、採用理由、影響範囲、戻し方の五点があれば、次の担当者は同じ調査を繰り返さずに済みます。数値を残す場合は、その数値が観測値、推定値、推奨閾値のどれかを明記します。
今回のような運用改善は、一回の成功だけでは完成と判断できません。翌日の自動実行、失敗時の停止、再実行後の突合まで確認して初めて定着したといえます。ブログでも、実装済み、検証済み、継続観察中、構想段階を混ぜず、読者がどこまで再現してよいか分かる表現にします。
判断記録には、変更前と変更後の小さなサンプルも添えます。ログ全体や実データを転載する必要はありません。入力3件、期待結果、実際の結果、差分理由だけを匿名化して残せば、後日の仕様変更でも同じ観点を再検証できます。サンプルの生成方法と確認コマンドも併記し、画面を見た人だけが分かる知識にしないことが大切です。自動テストで確認した範囲と、人が目視した範囲も分けて書きます。
次に改善するなら
次の改善候補は、**読み込まれた指示ファイルと概算トークンを定期レポート化し、増加時に棚卸しを促す**ことです。これは2026-09-14時点では次段階であり、完了済みとは扱いません。実装する際は小さなfixtureと明示的な上限から始め、日次処理へ接続した後も数回の実運用を観察します。
参考情報
- 本記事の根拠にした実施記録日: 2026-08-29
- 情報・公式仕様の確認日: 2026-09-14
- [Claude Code memory and CLAUDE.md](https://code.claude.com/docs/en/memory)
- [Claude Code cost management](https://code.claude.com/docs/en/costs)
公式ドキュメントは現在の機能・コマンド・制約を確認するために参照し、ローカルで実施した結果は日次記録と成果物で確認しました。仕様、価格、提供条件は変更される可能性があるため、再現時には掲載リンクをもう一度確認してください。
