最近の株価評価運用②—一目シグナルを検証運転する


最近の株価評価運用②—一目シグナルを検証運転する

一目シグナルの検証運転

前回は、日次のAI評価対象をEvent、Due、Revival、Discoveryの4入口で選ぶ運用を書いた。今回は、その前段にある「新しい指標をどう安全に追加するか」を取り上げる。

最近の評価基盤では、一目均衡表に由来するシグナルを追加した。ただし、追加したからといって、すぐに総合スコアへ混ぜるわけではない。まずは表示をオフにした検証運転として、毎日レポートだけを出す。データが埋まっているか、前日との遷移が自然か、シグナル分布に偏りがないか、外部チャートと大きくズレていないかを確認する。

> 本記事は評価システムの検証手順を説明するものであり、特定のテクニカル指標が将来の株価を予測できると主張するものではありません。

なぜすぐ採点に混ぜないのか

株価評価のスコアに新しい指標を入れると、ランキングが変わる。ランキングが変われば、AI評価対象も変わり、通知内容も変わる。つまり、一つの指標追加は、日次運用全体へ波及する。

そのため、新しいシグナルは「計算できた」だけでは足りない。少なくとも次の4点を確認したい。

1. 対象銘柄の大半で値が入っているか
2. 前日からの変化が計算式と矛盾していないか
3. 1、0、-1、NULLの分布が極端に偏っていないか
4. 外部チャートの見え方と致命的にズレていないか

この確認を毎日自動で出し、数営業日問題がなければ、次の段階で表示や採点への組み込みを検討する。

検証1: 非NULL率

直近の検証レポートでは、日足の雲位置、転換線・基準線、遅行線、転換基準クロスなどは、全銘柄・ハードフィルター通過銘柄ともほぼ100%に近い充足率だった。

一方で、週足や月足は少し欠損が出る。これは必ずしもバグではない。上場期間が短い銘柄、価格データの履歴が足りない銘柄、週足・月足への集約に必要な本数が足りない銘柄では、計算できない値がある。

ここで大切なのは、欠損をゼロにすることではなく、どの列にどの程度の欠損があるかを毎日記録することだ。ハードフィルター通過銘柄だけで見ると欠損率が下がる場合もあり、評価対象として使えるかどうかの判断材料になる。

検証2: 前営業日との遷移整合性

シグナルは、単日の値だけ見ても品質が分からない。クロスや雲抜けのようなイベント型シグナルは、前営業日との遷移で確認する必要がある。

直近レポートでは、日足クロスの発生件数と不整合件数、日足雲抜けの発生件数と不整合件数を出している。たとえば「発生176件、不整合4件」のように記録することで、計算式全体が壊れていないかを追える。

不整合がゼロでないから即失敗、というわけではない。調整後価格、欠損補完、上場直後銘柄、データ更新タイミングなどで説明できる場合もある。ただし、毎日不整合率が跳ねるなら、計算式や入力データの変更を疑う。

検証3: 分布サニティ

三つ目は分布を見ることだ。各シグナルが1、0、-1、NULLのどれをどれだけ出しているかを確認する。

直近の検証例では、日足の雲位置、転換基準、遅行線、クロス、雲抜け、週足、月足それぞれについて、分布表を保存している。ここで見たいのは、極端な偏りだ。

たとえば全銘柄の99%が同じ値になる指標は、ランキングの差別化にはあまり効かない可能性がある。逆にNULLが多すぎる指標は、欠損処理の設計が先に必要になる。シグナルの意味を議論する前に、まず機械的な分布を見る。

検証4: 外部チャートとのスポット照合

最後に、いくつかの銘柄を外部チャートと目視で照合する。直近レポートでは、特定の大型銘柄を例に、日足・週足の転換線、基準線、先行スパンA、先行スパンBを出している。

ここでは、完全一致を目的にしすぎない。データが調整後価格ベースか、非調整価格ベースかで値は変わる。週足・月足は暫定バーの扱いでも揺れる。むしろ、どの前提で計算しているかを記録し、外部チャートと大きな方向感が合っているかを見る。

表示オフで運用する意味

検証レポートの冒頭には、`検証運転中` と明記している。これは、指標を計算しているが、まだ通常の採点や通知表示には使わないという意味だ。

この段階を置くと、失敗しても影響範囲が小さい。日次評価対象の選定や総合スコアには影響しない。レポートだけを見て、計算結果を評価できる。

AIエージェントを含む評価基盤では、この「表示オフの検証運転」がかなり有効だ。AIの評価プロンプトへ新しい数値を渡す前に、その数値自体が安定しているかを確認できるからだ。

採点へ進める条件

一目シグナルを採点へ進めるなら、少なくとも次の条件を満たしたい。

  • ハードフィルター通過銘柄で主要列の欠損が少ない
  • 遷移不整合が低水準で安定している
  • 分布が極端に偏っていない
  • 外部チャートとのスポット照合で説明不能なズレがない
  • 既存スコアへ加えたとき、ランキングが過度に暴れない

特に最後の点が重要だ。新指標を追加して総合スコアが大きく変わるなら、それは改善かもしれないが、ノイズを増やしているだけかもしれない。まずはshadow運転で、既存スコアとの差分を追うのが安全だ。

まとめ

新しいテクニカル指標を評価基盤へ追加するときは、計算式そのものよりも運用への入れ方が重要になる。非NULL率、遷移整合性、分布、外部照合を毎日確認し、問題がなければ次の段階へ進める。

次回は、個別銘柄ではなく「テーマ」のまとまりを見るレイヤーを取り上げる。個別スコア上位だけでは分かりにくい市場の熱量を、テーマヒートとして日次で記録する考え方だ。


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